豆大福で有名なお店がある。
程よい塩気がきいたソレは大変美味で、
この近所はもちろん、
噂では某皇族の方も顧客らしい、とのこと。
芸能人の、
楽屋のおつかいものとして、
テレビで紹介されてたのを見たこともある。
好みもありましょうが、
私が今まで食べた中では一番好きな味。
よく利用している。
かなり繁盛しているので、
小さいお店ながらも常時5〜6人働いている人がいるのだが、
私はその中のひとりのおねぃさんが好きだ。
年の頃は私と同世代ってとこ…かな。
はっきり言うと愛想のかけらもない。
笑った顔を見たことがない。
いつも目の下あたりに憂いを抱えている表情をしている。
が、
激しく美人なのだ。
化粧っ気がないので、
本当に本物の美人なのだ。
失礼ながら、なんでここにいるのかな、って感じで、
ひとり浮いている。
これまた勝手な推測だけど、
本人も【あたしはここでちんまりしてるタマじゃないのに…】と、
思ってるんじゃないかと、
そんな風に感じる。
そういう表情をしている。
私はこのおねぃさんを見るたんび、
頭の中で勝手に小説を書き上げる。
豆大福を売っているけど、
国際的なスパイ。
とか、
夜はどっかでひっそりバーをやってる。
とか、
…他は書けない。
わはは。
悲しみで憂い顔というよりは、
怒りや不満で憂い顔、
って感じなおねぃさん。
私がここに越して七年。
いつ行ってもそんな表情で一貫しているので、
気分屋というわけではない。
その顔が標準なのだ。
一度話してみたい。
対してここのご主人(多分後継ぎさん)は、
いつもニコニコ愛想がよい。
雨の日は【足元が悪い中すみませんねぇ】
晴れの日は【今日はいいお天気ですねぇ】
お金を払えば【いつもありがとうございます、またよろしくお願いしますね】
嫌味なくニコニコと愛想がよい。
が、
一度、
パートさんたちに【誰?この注文受けたの?!数違うでしょうっ!】と、
注文ミスにイライラし、
声を荒げているのを見てしまったことがある。
(そこは本当にあっというまに売り切れになるので、
一個単位の注文ミスは大きく響くのだ)
はぁ、この人も怒るんだー。
と暖簾の間から盗み見して私。
家政婦は見た状態だな、まるで。
今日はこれからリハーサルなので、差し入れにと豆大福を買った。
憂い顔のおねぃさんが対応してくれた。
そういえば、一度、
ひょんなところで、おねぃさんを見たことがあった。
相変わらず美しい憂い顔だった。